果樹園の味わいを閉じ込めたチョコレートスイーツと完熟白桃のパイ
旬の果実。7月も下旬を迎えると、真っ先に思い浮かぶのは白桃が主体ですが、ブラックベリー、カシス、レッドカーラントなどのベリー類。これらの果実は、生食よりも加工向けの方が需要が高いように思います。
加熱や組み合わせで活きる、果実の酸味にとどまらず、組み合わせることで生まれる、果実味も引き出す構成で仕上げたオーチャード。果樹園を意味する英語から取ったネーミング。カシスオレンジという、あまりにも有名な組み合わせから発展した、カカオのアロマとのペアリングを意識した夏向け新作と、相反して果実の完熟具合に酸味と濃厚な木の実のフレーバーでバランスを取り持った、完熟白桃とピスタチオのタルト。
今回はフルーツと組み合わせる何か。をテーマに掲げた夏の新作。最後までお付き合いくださいね。
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ペルーカカオとカシスのペアリングを夏向けのチョコレートケーキに落とし込む
レモンカードの要領で、カシスとブラックベリーのピューレと全卵、グラニュー糖を混ぜ合わせて火にかけカスタードクリームのように炊き上げます。この時、玉子とフルーツの酸が反応するため、分離状態に。このまま火入れすると分離状態が進んでしまうので、水でふやかしておいたゼラチンを加えて炊き上げます。(固める役割としてのゼラチンの効果ではなく、つなげる役割として使用します)
ナップの状態(煮上げる温度)82℃で火から下ろし、スティックミキサーを用いてなめらかになるまでミキシング。
氷に当てて冷やし、冷たい液状の生クリームを加えて混ぜ合わせます。
バターではなく、固化しにくい生クリームで口の中で早く溶けるクリームに仕上げるのが目的。
夏場の体温(口内温度)が高い状態で、口どけの鈍いクリームはやはりしつこさを感じてしまいます。
軽い口どけを助長するのが、メレンゲ。ここではボイルメレンゲで糖分も控えめに、泡の強度も抑えることでより軽さを引き立てます。
レイヤードスタイルに仕上げる、ビスキュイジョコンドには溶かしバターを加えずライトな印象を。アーモンドの油分で十分な味わいを得ることができます。
目立たない脇役のオレンジジュレを忍ばせていますが、暑い季節には口通りの良い、水分のテクスチャーを一層加えることで、陰ながら果実味の奥深さを引き立てる役割を果たします。オレンジジュース、濃縮オレンジのビター感も加えたゼラチンベースのジュレもカシスとブラックベリーの層に加えます。
ムースショコラアレジェ
牛乳とチョコレートで作るガナッシュと、泡立てたホイップクリームを合わせる、シンプルでチョコレートの味わいがダイレクトに伝わる油分も控えめで軽い食感に仕上がる夏向けのムースショコラ。
カカオ分60%以上、ハイカカオのブラックチョコレートで軽やかな味わいを得るためには、スタンダードなムースショコラで加わる、卵黄のテクスチャー、クレームアングレーズやパータボンブは配合しません。牛乳と合わせるガナッシュで油分も大幅に減らします。
パータボンブ、アングレーズクリームについての説明を記したページへはこちらから
通常、生クリームを用いてガナッシュを作りますが、水分が主体の牛乳にはゼラチンを加え、保形性を補います。
ガナッシュの仕込みではきちんとした乳化のオペレーションが必須。チョコレートの乳化温度のも注意しながら、ツヤと粘りをきちんと確認して行います。
チョコレートムースでは珍しい、ガナッシュを冷やし、ゼラチンのゲル化を促すことを工程に。
チョコレートの乳化の性質上、カカオバターを融点においた状態で合わせるのがほとんどです。このレシピではふんわりとした軽い仕上がりを目指すので、生クリームの気泡を潰さない温度帯で合わせることが条件となるのです。
チョコレートと混ぜ合わせていく過程で生クリームのオーバーランも次第に上がっていきます。
ガナッシュをゆるめてホイップクリームと混ざりやすい固さにするのです。
このムースショコラは、混ぜすぎると分離状態に陥りやすいので注意が必要です。ゼラチンのゲル化とカカオバターの結晶化に起因するからです。
カードルに延したムースショコラアレジェに、カシスオレンジのムースを埋め込みます。ビスキュイショコラで蓋をして冷やし、切り分けてチョコレートスプレーで仕上げて完成です。
カシスとブラックベリーの果実味、ショコラノワールと合わせることで広がるカカオのアロマティークな世界観。これは季節的に余分な油分を取り除き、夏らしいチョコレートケーキに仕上げる意図によって生まれた味わいです。素材同士の組み合わせの妙をお楽しみください。
完熟の白桃のおいしさをピスタチオと味わう
ピスタチオのタルトクリームを型に敷きこんだフィユタージュに絞り出し、焼き上げた土台に、カスタードクリーム、湯むきした完熟白桃、ラズベリーホイップクリームを絞り出して仕上げた季節のタルトです。
ラズベリーのホイップクリームは、マスカルポーネをやわらく練ったところに、液状の生クリームを少量づつ加えてなめらかに整えます。
温めたラズベリーピューレとゼラチンを合わせ、生クリームと静かに合わせて一晩おいてから使用します。
泡立てたクリームを絞り出します。白桃とカスタードクリーム、ラズベリー。意外とも言える、ピスタチオの組み合わせは単独の素材に対してではなく、全体の引き締めと味わいの奥深さを感じさせるペアリングなのです。
完熟白桃とピスタチオのタルト。ジューシーでザクザクで。食感の対比が面白く、食べ応えも十分だと思います。季節の果実が主役のスイーツをどうぞ。
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