国産レモンで仕上げるタルトシトロン
国産レモンが注目を浴び、昭和後期に流行したレモンケーキなどもその懐かしさや昔ながらのフォルムなどがかえって目新しく映ったりなど、一躍注目を浴びる時期がありました。
無農薬、非ワックスといった健康面を考慮した国内産の果物としても関心を集め、確固たる地位となったレモン。その旬が真冬であることはまだまだ認知されていないのかもしれません。
2020年は暖冬傾向です。1月から2月にかけてはカカオリッチなブラックチョコレートベースのスイーツが例年の定番でしたが、気温の影響で食の嗜好も少し変わります。日中の気温も10°を上回る日が続けば、レモンの様なしっかりとした酸味と香りのものも存分に楽しめる様に思います。そこで今年はペルシュにとっては新作ですが、フランス菓子としては定番のタルトレットシトロンを提案したいと思います。バターリッチなレモンカードは、カスタードクリームでおなじみ、イギリス生まれのクリームと言われています。curdは凝縮するという意味があり、豆腐はsoybean curd(凝縮した大豆)と呼ばれる様です。
タルトシトロンはムラング(イタリアンメレンゲ)をこんもりと盛り付け、甘みと酸味を相対的に纏わせますが、もったりしたメレンゲの口溶けが少々苦手な私は、シャンティショコラを用いてそのニュアンスを再現しています。
瀬戸内レモンとフランスバターのタルトシトロン。レモンカードの製法に特化した内容ですが、最後までお付き合いください。
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タルトシトロンの製法
ビスキュイノワゼットの焼成
フランスではレモンとプラリネを組み合わせることがしばしば見受けられます。今回はヘーゼルナッツのビスキュイ、そしてフィナンシェに欠かせない、焦がしバターの風味を加えて、更なる奥行きをつけた土台づくりを行います。
ミキシングボールに、ヘーゼルナッツパウダーと純粉糖、ヴェルジョワーズに卵を加えてミキシングしたところに焦がしバターを注ぎ入れてパートノワゼット(ヘーゼルナッツの中種)を準備します。
メレンゲは加える糖分を少なくし、軽い口溶けのタイプに泡だてておきます。
パートノワゼットは重く重厚なベースなので、半量加えたメレンゲでしっかりと緩めてあげる必要があります。
小麦粉はフランス産のものを使い、ナッツのベースに負けない香ばしさを持たせます。残りのメレンゲを加えてふんわりと整えてから天板に流して焼成します。
クレームシトロンの仕込み
レモンは皮を削り、果汁を絞って合わせておき、弱火にかけて温めておきます。
玉子は全卵を溶いてグラニュー糖をすり合わせておいたものを予め準備しておきます。
玉子も乳と同じ様に産に触れることで固化する性質があるのでグラニュー糖で「糖衣」させておくことでダマになるのを防ぐことができるのです。
中火にかけながら全体にムラなく火が通る様にホイッパーを用いて混ぜ合わせます。
卵黄のみで仕込む場合はアングレーズクリーム同様、ゴムヘラで作業します。遠心分離が働き、水分の少ない卵黄は分離状態に陥りやすくなりがちです。
殺菌温度になったら火から下ろし、少量のゼラチンを加えて40°まで冷却します。
ダイス状に切り分けておいた冷蔵状態の冷たいラヴィエットバターを加えてハンドミキサーでしっかりと攪拌します。バターの融点を超えてしまうとバターの成分が完全に溶けてしまい、ザラついた舌触りになってしまう原因になります。
特にフランス産、ラヴィエットの自然発酵の風味の良さを損なわない様、慎重に作業したいポイントでもありますね。
ラヴィエットバターはペルシュのスペシャリティーとしてしばしば登場します。バタークリームとして仕上げたスイーツもご覧くださいね
炊き上げたレモンクリームが既に糖衣されているので、バターの乳に干渉することはあまり考えませんが、乳と糖、水分の乳化をきちんとした状態に整える必須の作業です。
絞れる硬さになるまで冷蔵庫で休ませてから組み立てに入ります。バットに薄く広げてラップ材で覆い保管するのです。
型抜きしたビスキュイノワゼットにレモンのコンフィを塗り広げて、空焼きしておいたブリぜ生地に絞り出したレモンカードの中に埋め込みます。
シャンティショコラは、ホワイトチョコレートをベースに、削っておいたレモンの皮、バニラビーンズを加えて香りたたせたものを使用します。前日に仕込み、仕上げる直前に泡立てて使用します。
シャンティショコラ、レモンジュレを泡立てて作るレモンメレンゲ、ヘーゼルナッツのキャラメリゼ、コンフィシトロンなどで飾り付けていきます。
酸味は比較的穏やかですが、ヘーゼルの香りがレモンとの相性を引き立ててくれます。こちらにもぜひ注目をしてみてくださいね!
余談ですがレモンコンフィは、夏向けのマカロン、グリーンレモンで使用した物を使用していますので、緑がかった色あいです。(冬季は販売休止です)
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