バレンタイン向け、アナエロビックコーヒーとアッサンブラージュカカオのガトーショコラ
ダークチョコレートモカの製作にあたって
ホワイトチョコレートモカというお菓子、年間通じて結構人気の高いアイテムだなー。と常々思っておりました。じゃあ結構ボリューム感のあるチョコレートモカも提供したら絶対面白いよね?というのが始まりではあったんですけど、フレーバーだけでビターチョコレート、エスプレッソでは全然面白味がないだろう、という悩みはありました。そんな中で、トレンドのコーヒーと出会い攻めた構成から少し遠ざかっていた自身を鼓舞する意味でも、しっかり作り込んだ内容となっております。
まず初めにアナエロビックコーヒーのフレーバーについてですが、なんだか難しい単語が多いですよね。なので自分で勝手に解釈したコトバで説明します。
・モカとかエスプレッソみたいに、焙煎した、ローストした香りが弱め。
・赤ワインみたいな、酸味を伴った発酵した香り。
・従来のコーヒーの様な香ばしさに欠ける。
大体こんな感じでしょうか。デメリットにも聞こえてしまいそうですが、これがまるごと個性であり、長所だと思っています。
今ではすっかり定着した、シングルビーン (単一品種)カカオのチョコレートとの共通点も多くあると思います。
カカオ豆はフルーツである。シングルビーン由来のチョコレートの普及と波及に伴って、広く認知され始めたことの様に思っていましたが、アナロビックファーメーテーションの製法もまた、コーヒー豆はフルーツであることを再認識させる手法のひとつとして幅広く、特に食に対してアンテナがアンテナが高い方々に認知されていって欲しいものです。
香りの個性がググッと際立つのが、アナエロの醍醐味でしょうね。是非バリスタさん、ロースターさんと相談しながらお気に入りを探ってみてはいかがでしょうか。
まさに今回紹介させていただきたいガトーの製作の発端となったのが、先日投稿したブログでも紹介した、カメイ珈琲さんに提案していただいたグランクリュを位置付けたコーヒーを数点( 他にはコロンビアピンクブルボン、ゲイシャナチュラルなど) 試飲した中ですごく興味深いものに出会えたからなのです。
Yunnan – Simao – Catimor – Anaerobic Honey Process – Infused White Peach
ユンナン、本来なら紅茶で有名なエリアですよね。自分でもこのことにビックリして聞いたことなんですが、近年すごく発展しているエリアとのことで、個性的な製法も相まって今後注目していきたいものですね。今回はこのコーヒー豆を用いてチョコレートと組み合わせたガトーの製作していきます。
(余談ですが、ヴァローナのチョコレートでドゥーブルフェルマンタシオンのチョコレートを真っ先に思い出しました)
【About】
完熟したコーヒーチェリーを8日間の予備発酵を加えたのち、White Peachと共にタンクに投入し、嫌気状態で酵素の力により発酵を加える。発酵は150時間以上行われ、Brix6、PH4以下を目安に処理される。コーヒー本来の味わいとフルーツの味わいのバランスを研究し、酵素の力で自然に馴染ませることにより、違和感の少ないインフューズドコーヒーを作り出します。
中国最大の生産量を誇る雲南省の中でも最も生産量の多い地域であるプーアル市Shimao地区は、現代的なスペシャリティコーヒーの生産技術を取り入れながらも、飛躍的に品質を上げているコーヒーの生産地の一つです。
そしてコーヒー豆を焙煎していただいている、カメイ珈琲さんでもこの豆を購入できます。
カメイ珈琲店の店主の竹森 政人です。学生時代にコーヒー農園を訪れたことをはじめとして、2015年から自分でコーヒー豆をやいて販売、お店で提供しております(※現在はコーヒー豆の販売と飲み物のテイクアウトのみで営業しております)。
お客様に毎日飲んでもらえるような、またはホッとしていただける、気分転換してもらえるようなコーヒーを提供することを意識して焙煎しております。
コーヒー豆の種類は、コーヒーらしい味わいを大切にしながら、新しい風味や個性を楽しめるコーヒーにも気軽に挑戦していただけるよう工夫しています。
今回材料に選んでいただいたコーヒーは、後者の性格を持っています。比較的新しい産地であり、新しい精製方法をつかったコーヒーです。
お店では50gから豆を販売し、オンラインストアではお試しセットも用意しております。
https://kameicoffee.theshop.jp/
上記リンクから購入できます。
素材としてのコーヒーについて存分に紹介したところで、引き続き
ひとつのガトーを構築する際に、特に主役となる素材を前面に押し出していくことを意識しています。今回はアロマティックなコーヒーのアロマを感じてもらいたいことを第一に考えました。
コーヒーフレーバーのクレームブリュレを仕込む
今回、浅煎りのコーヒー豆を使用するので全ての仕込みで、コーヒー豆の抽出方法は細かくミル挽きした後、冷たい牛乳に漬け込み一晩かけて抽出したものを裏ごして使用します。なお裏ごしの際、抽出液は強く押し出しておきます。
クレームブリュレの製法そのものは通常通りに。牛乳を多めに、生クリームは低脂肪タイプを用いて、油脂分を控えたレシピを組み立てています。
クリーミーなアングレーズベースのチョコレートクリーム
アナエロコーヒーのアロマの個性で一番際立たせたいのが、ピーチのニュアンス。安直に白桃のムースやフルーツゼリーを組み合わせることも可能ですが、それでは面白味がまるで感じられない。フレーバー≠アロマという考えとも違って、アロマとフレーバーが相乗効果を生み出していかなければ意味がないと思います。カカオの持ち合わせる、アロマとフレーバーを独自にセレクトしていきます。
発酵感。というニュアンスでいえば、フレッシュ感が際立つのがベトナム産カカオ農園で収穫後すぐに加工されるチョコレート、60daysミルクをセレクト。とにかくトップノートのアタックが鮮烈です。フレーバーとしての重厚感とは違い、もぎたての果実館を味わえる数少ないフレーバー。バナナの様なネクターのニュアンスが有りつつも、追熟された様な重たさは存在せず、軽やかさとのアコードを成立させている味わい。
牛乳とグルコース、卵黄を加熱処理してアングレーズクリームを炊き上げてチョコレートに注ぎ入れて混ぜ合わせて、なめらかなチョコレートクリームに仕上げます。
ここで意識しているのが、クレームブリュレと油脂分、テクスチャー(質感) を揃えることです。つまり。チョコレートクリームとクレームブリュレが同じタイミングで口どけていくことです。コーヒーのアロマと、チョコレートの持ち合わせているアロマとフレーバーを同じタイミングで感じる様に仕向けているという意味です。
アロマとフレーバーが、さらに食材のポテンシャルを引き出し合う「ペアリング」の概念に則ったものでありたいからです。
チョコレートのムースアレジェ
センタークリームで引き出そうとしたコーヒーのアロマのニュアンスとは別に、フレーバーとしての酸味を引き出した層を組み立てることで、いっそう素材の魅力を余すことなく表現したい!!本当によくばりな構成となっております!!
フランス語でアレジェ/allégée 低脂肪という意味なんです。
クレームブリュレの製法からずっとキーワードとして言ってきた低脂肪についてですが、個人的見解をここで少し説明させてくださいね。
お菓子づくりで結構重要なのが、油脂分と水分の使い方です。代表的なのが乳化作業ですね。
ただ、油分といっちゃうと聞こえが悪いですが、卵の卵黄もそうですし、当然生クリームやバターも該当してきます。そして油脂分が多いと、香りがマスキングされてしまう。という持論を持っています。フレーバーが強いとアロマがぼやけちゃうというのも要因だと考えているのです。
油分を減らせばオールオッケーというわけではないのですが、今はこんな感じか。って程度に解釈しておいてください。
ではムースショコラの話に戻りますね。アナエロコーヒー共通の個性、酸味についてです。
先日投稿した、ブログ記事でも結構クドく語った「酸」についてです。特に今回はペルー産カカオがとてもアロマティックで、酸味もフレーバーから感じ取れるので適任かな。なんて思っていました。ちなみにペルーカカオとひと口に言っても当然多種多様なフレーバーがあります。最も有力な候補に挙がっていたのがBIOのペルーカカオチョコレート。フレーバーの余韻に蜂蜜のアロマも相まっていたのですが、コーヒー由来のアロマと微妙にズレた部分があり断念しました。
ただ、このチョコレートとの組み合わせもすごくお気に入りになっちゃったのでマカロンとしてリリース決定しました笑
マカロンカフェノワール
トップノートはマカロンのコックのアマンドの甘みです。バレンシアアーモンドのフレーバーとガナッシュの甘みがフィットします。ここで感じられるのが、チョコレートとコーヒーのひとつのまとまったニュアンスなので、室温に戻してからゆっくりとご堪能ください!
それでは!改めて。ムースアレジェで実際に採用したチョコレートですが、エクアドル、サントメ島、ペルー、ドミニカ共和国の4つの産地の豆をブレンドしたチョコレート「トワコンチネンツ」をセレクトしました。
ペルー単一では正直言って少し尖り過ぎた、コーヒーの旨味のトーンであるボディ感の甘みがどうしても抑えつけられてしまう雰囲気を感じたからです。そこで、エクアドルやサントメプリンシパルのカカオの持つ、バニラやオレンジなどの甘い香りのニュアンスが加わることで自分が思う、トップからノートエンドまでを網羅できたのではと自負しています。
補足として説明させてください。アッサンブラージュという単語を聞いたことがあるかもしれませんが、ブレンドワインのことを呼称している単語です。
ワインの話をある程度理解していくと、チョコレートに対する解釈も幅が広がっていくので知識として習得していくのはとても有益だと思います。
https://www.enoteca.co.jp/article/archives/6355/
ブレンドワインについての記事です(外部リンク)
ムースアレジェの製法は至ってシンプル。クレームブリュレの時と同じ抽出方法で前日抽出した牛乳を温め、ゼラチンを加えてからチョコレートに注ぎ入れてガナッシュの様にします。
ムースショコラアレジェに限らず、チョコレートムース全般において温度管理は特に重要です。
よく言う、テンパリングの温度帯になぞり、チョコレートの結晶の成分が綺麗に分散していると言われる温度にチョコレートを調整してホイップクリームと混ぜ合わせるのがマイルールです。ホイップクリームの温度はもちろん、泡立て具合、混ぜ合わせる加減も大切です。目に見えないレベルで分離を引き起こしてしまうのでは?と考えているので、厳密なマイルールがここでも活躍します。
ビスキュイショコラでムースをクロージングして、チョコレートのグラサージュ、焼き上げておいたサブレショコラアマンドをセットしたら完成です。
現状、12cmサイズのアントルメのみの提供予定でいましたが、プティガトーでの提供も数量限定で提供予定していますので、詳細をお待ちください!