ペルシュのオーナーブログ(第七〇四回)

グルテンの話します

お菓子づくりでグルテンのことを理解するのはとても重要だと思っています。日々いろんなお菓子を新たに考案するときにも絶対に役立つことだと思います。お料理と製菓の違いって、ロジックをベースに仮定できるのが強みだと思っています。前回のブログで伝えたかった「酸との対峙」にも通ずる、どの様な菓子づくりを目標にしていくかが大事だと思っています。

いまはどうか分かりませんが、グルテンフリーダイエットって話題になったじゃないですか。そういうのとは全く違う話だし、関連性も何もないです。むしろ、グルテン形成っていうのは「水と油の乳化作用」と同じく、結合していく、させていく。という化学要素をたくさん孕んでいる菓子づくりにおいてはその意味合いをキチンと把握しておくべきだと感じています。

よくある「さっくりと合わせる」という、チートのような表現。自分、あれめっちゃめちゃ嫌いなので!

今回も相当なエゴイズムを振りかざした内容にはなるのでコレが正しい!正義だ!とは言えません。けどこれが自分にとって大切なアイデンティティなので持論を惜しみなく公開していこうと思います。

ちなみにですが、検索機能は日々進化していると強く感じています。しかしながら実地による経験に勝るものはないと思うのです。

食べる愉しみとは、製造過程を知って知らずでは理解度もかなり変わると思いますので、お菓子を作ることがない方にもご一読いただけましたら幸いです。

検証してみた

なんだか今まであやむやになってきていることに対して、きちんとした正解というか、実践によってよりロジックな答えを導き出そうじゃないか。そう思ったのが、やっぱり人に教えていく。培ってきたものを継承していきたいと思っているからです。ブログにして文字起こしするのも根気がいるし、修正とかも時間がかかる。それでも必要なことだと思うから書きます。

ボクらの時代って、修業って言われていて技術を身につけたい、いろんなことを覚えたい、目標に向かって必死だったわけですよ。結構根性論で成立するやつ。

先輩から仕事をもらうのにもひと苦労みたいな部分もあったし、じゃあいざ教えてもらう。ってなった時も

「だいたいこんな感じ。わかる?」みたいな。

共立てのジェノワーズ、シュガーバッターのパウンド生地。雰囲気で感覚で掴み取れ!そんな教わり方ばかりでした。

ココロの中で密かに思うわけですよ。いや、よくわかりません。って。正直な話…でも、そんなこと面と向かって言ったらぶっ飛ばされるんで

「は、はいっ!」大きな声でちゃんと返答するという一択なんですけど。

だけど、すっごい「感覚だけで」事が進むので、雰囲気でやっちゃってるんですよね、仕事そのものを。だからいろんな人によっていろんな言い方があって。これではダメだな。って思って自分で深掘りしだしたんです。トライアンドエラーってやつです。言われてやる受動的なそれではない。ちゃんと理解をしないといけない自分一人での探索作業です。

 

修業先のお店のレシピもそうでしたけど、映えるビジュアルと、有名〇〇シェフのレシピとか。意図が見えないっていうか、なぜこうしているのか、なぜこの材料を使うのか、高価な材料とか珍しいお酒とか、そんなんどうでもいいんですよ。

大量のシュー生地練って、硬さの確認をしてもらうんですけど「ハイ、こんくらいね」っていう、“これくらい” を明確にしたいんですよ!誰にでも明確に伝えられるロジックが欲しい!

カスタードクリームの炊き上げもおんなじ。こんくらいっていう、鍋から離れる、ぶくぶく煮立った感じとか。

今になって思うのが、実際に出来上がったパーツを実食してみて

「加熱のこのプロセスで不十分だったことで、食感がザラつく。浮き上がりが良くない」といった、α化(デンプンの糊化)については容易にディスカッションできるはずです。小麦粉のグルテン形成も同じ感覚で、食べてみればわかることも多々あるので、特にお菓子づくりをされている、もしくは業界のお仕事に従事されている方には注意深くみていただきたい部分ですね。

てな感じです。わかっていそうで実はそうでもない。今回はクドクドとそんな痒いところを掻いていきます!

あと、めっちゃ今でも感じる事が

「何度で何分」という質問

生地の焼成温度と時間。あれもすっごいうざいなー、なんて誤解を招く言い草ですけど。当然目安となる数値はあります。

大事なのはデータよりも、どうやって食べてもらいたいか

焼き方も当然なんですけど、どんな風に食べて欲しいかでかなりアプローチが変わっていきますよね。

焼き菓子に関しては、やっぱり都度食べてみながら雰囲気を確認して自分のイメージするものにどう近づけていくか意識しています。

最近特に、クッキーなどは焼成温度もさらに細分化させています。

例えばレモンサブレ。わりとこんがり焼きたい派だったんですけど、配合されているアーモンドパウダーのナッティなボリューム感(要するにナッツの味わい)の意味合いを、レモンの甘酸っぱいシュガーコートと粉のロースト感との対比を考えた場合。

低音に落として、生地全体に火が通った感に切り替えました。

当然なんですけど、前に食べた香ばしい方が好みだ!なんてお叱りをもしかしたら受けるかもしれません、それ以上に大事なのはやっぱり自分がどう表現したいか、目指す方向性だと思うんです。生地というのは読んで字の如く「生きてます」真冬の寒さ、エアコンも効き目が弱い真夏の日中。当然その時の室温湿度にも左右されるので、数値化はしていますが、焼き上がりの雰囲気に関しては絶対これだという状態を厳守しています。とにかく勿体ぶらずに季節毎に定期的に試食して状態を確認するべきです。

 

レモンサブレであれば、丸みのある優しいクッキーの味わいにレモンの酸味が心地よい。そんな感じに焼きたかった。

ケーキのパーツとして使う、サブレクランブル。

卵は配合されておらず、小麦粉、砂糖、バター、アーモンドパウダーを大体同割で加えて仕込みます。そぼろ状になる様に出来た生地を分割して焼き上げるのですが、これも最近では焼成温度を下げました。こんがりと焼き上げると、食べ進めていくとこんがりとした香ばしい印象が強く出てきちゃう。何かと粉にしっかりと火を通すべき。というある種の「しがらみ」みたいなところから脱却出来た様にも思えてきます。サクッとした食感とアーモンドの旨みがちゃんと出せれば美味しさのバランスがより成立した様にも感じられる様になりましたね。

小麦粉について

先ず、小麦粉イコール、グルテンについてキチンと。

お米でいうところの、白米部分。すなわち糖質とタンパク質の質と量により、グルテンの含有量が振り分けられているのです。

日本では強力粉、中力粉、薄力粉に分類されます。

小麦にも当然種類が細かく分けられており、強力粉用品種の小麦。北海道産のゆめちからなどは国産小麦としても一躍脚光を浴びましたね。

強力粉は硬質小麦から作られ粒子が荒くサラサラの粉になっています。グルテンの含有量は12%前後。

この特徴を踏まえ、タルト生地を伸す時にも打ち粉として使用されるのです。

薄力粉は軟質小麦からできておりグルテンの含有量は7%前後。

軟質=柔らかいという点からも、ケーキ類全般で使われます。

中力粉は中間質小麦や軟質小麦から作られておりグルテンの含有量は9%前後となっています。

薄力粉と強力粉を混ぜる際は「1:1」の分量で混ぜ合わせるとグルテン(たんぱく質)の割合が中力粉に近くなるため仕上がりも近くなるのです。

ここからが本題です。

フランスの小麦粉はよく「中力粉」で代用する。とされています。

中力粉って、検索したら「うどん粉」なんですよ…え?…ええっ?

饂飩のもちもち食感?すっごい腑に落ちず、納得出来ずに居ます。

グルテングルテン、って言ってますけど、薄力粉と強力粉のグルテン形成って、「向き」が違うみたいです。

強力粉は横方向に。薄力粉は縦方向に。

グルテンを「ゴム紐」と想像してもらうといいんですけど、幾重にもサンドされた、クリームとスポンジ生地。縦方向のゴム紐は、上下からの圧力には弱いですよね。要は噛んだらペシャって潰れるみたいな。

一方で、咬み応えのあるパンは、横方向のゴム紐が走っているので「弾力のある噛み応え」になるわけです。

過去にスポンジ生地に加える小麦粉を、間違えて強力粉にしてしまった事例があったのです。見事に膨らまなかったです、生地が…それこそパンみたいにペシャンコ…

焼き上げたスポンジケーキを、クリームをサンドするのに横にスライスするのと、切り分けるのに縦方向にカットするのと全然圧力変わるのは、グルテンの「向き」によるものです。

 

 

ガレットブルトンヌ

使用しているのは、北海道産小麦粉。宝笠ドゥノール(薄力粉) 春よ恋挽きぐるみ(強力粉) をブレンドして使用しています。

つまりこれは一般論でいうところの「中力粉]」概念なのかもしれません。

でも違うんです!これについて説明させてください。増粉さん、薄力粉の粒子がとても細かくて、グルテン形成のチカラがとても弱いんです。

噛み応えが薄力粉だけでは足りないと思ったので、強力粉をブレンドしました。

これで個性的な食感、バターの風味と小麦粉の味わい、いろんなニュアンスが留まってくれます。

いろんな小麦粉を使って試してみた結果、小麦粉の粒子の細かさが結構影響する気がしています。

粒子が細かくなると、グルテン形成し易くなる。との記載を見かけますが、むしろ逆だと感じています。

お菓子づくりがスキな方は使ったこともあるかもしれませんが、宝笠ゴールドはその代表。増田製粉が製粉しているのですが粒子もとても細かく、ジェノワーズ(スポンジケーキ)の場合でも、一般的な薄力粉と比べるとよりしっかり混ぜないと成り立たない。つまりグルテン形成を促すための「混ぜ込み」回数に至らないことも。

じゃあ粒子が細かい粉なんか作らなきゃいいじゃないか!なんて思うこともあるかもしれないですよね。

バターカステラ:ペルシュだとカスティーリャの名称です。しっかり時間をかけて混ぜることのメリットや、粒子が細かくなることでのどごしの良い、しっとりとした生地に仕上がるのも事実です。

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過去記事でガレットブルトンヌについての詳細を記したサイト。ここでもざっくりグルテンについて説明していた経緯もあるんですよね。今回はよりしっかりと説明をさせてください!

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生地の混ぜ込みの重要性をもうひとつ。それはカステラの泡切り。

ペルシュさん、過去にカステラ焼いてた時期があるんですよ。それとバウムシュニッテン。多分15年は前の昔話。

お菓子に興味のある方は聞いたことがあったり、もしかしたら検索して調べて見たり。気泡を抜くことできめ細やかな層を形成する。というのが一般論。

スポンジ生地とおんなじ製法で仕込んだ生地を、木枠と呼ばれる型に流し込んで、オーブンに入れるんです。途中で取り出してグリグリ生地をかき混ぜるんですよ。最初はビックリしましたね。

泡切りは生地全体の火の通りを均一化させる効果、飛躍した考え方かもしれませんが、厚焼き玉子、出し巻き卵の製法に通ずる気がします。厚みのある生地をしっとり均一に火を通すのは難しいことなんですよ、実際。

混ぜている最中にもグルテン形成の助長にもなっている気がします。あくまでも仮説です。仮説。何事も何故だろう?と思う事が大事だと思うのです。物事の新しい始まりには疑問を持つことと、投げかけることだということを。

 

 

アメリカ生まれシフォンケーキ。水分を多く含む生地(生地に水を入れることも大きな理由)で、一番火の通りにくい中心部分を敢えて空洞にすることで、しっとりふんわりの食感を実現できているのは有名な話。画像は過去に提供したことのある、レモンシフォンです。

上手に焼き上げるコツ、実は小麦粉を加えてからしっかり混ぜると水分としっかり反応してグルテンが形成されて焼け落ちを防げること。知ってましたか?メレンゲとの手合わせも当然最重要タスクですが、シフォンケーキにできてしまう「くびれ」にお悩みでしたら少し混ぜる手が疲れるくらい混ぜてみるのも試してみる価値ありだと思います。スポンジケーキも同様です。さっくり混ぜるだけでは焼け落ちします。混ぜるって大事です。こんくらい、って基準になっちゃうかもですが。

いろんなお菓子でいろんな製法が存在していますよね。材料というよりは、どういったお菓子に仕上げたいか。という、仕上がりのイメージがとても大切だと思っています。製法そのものに賛否両論あると思います。いや、絶対あります。

 

サブレノルマンディアールグレイ

メルヴェイユ、エクリチュール、などが該当するんですが、フランス小麦100%を日本国内で加工。案の定粒子がなんか違います。フランスの粉だから、混ぜちゃうとグルテン出過ぎちゃう謎迷信文化が蔓延っている気がします。

実際に直面した、製菓学校で実習した時の話しも交えながら触れていきたいと思います。

ビスキュイジョコンドっていう、いかにもメイドインフランス的な生地を焼いたんですよ。そしたら?やっぱり上手くいかない。生地の構成は、アーモンドパウダーと卵を泡立てたものと、メレンゲ、そこに小麦粉を「さっくりと」合わせて最後に溶かしバター。

ここでいう「さっくりと」は、生地のダメージを広げない。いわゆる生地がダレないように混ぜすぎないという意味です。フランス菓子のビスキュイ、biscuitは薄焼きという意味合いらしく、それこそ日本のスポンジというようなパーツはほぼないらしいです。

失敗してしまったビスキュイジョコンドとは、焼き上げた後、組み立て作業のため切り分けて持ち上げた生地が、破れちゃった事です。

結局のところ、グルテンなんですよね。使用した小麦粉の銘柄から混ぜ不足が判明したんですが、微粉末の薄力粉はしっかりと混ぜ込むことでその効果を発揮するので、使用用途に応じて銘柄を把握しておくと良いと思います。今回の場合、対策としてはシフォンケーキのように事前に卵とアーモンドを泡立てたところに薄力粉を混ぜこんでおいて、グルテン形成をあらかじめ促しておく事でクリアできますので、心当たりの方は試してみてください。

それではサブレノルマンディに話を戻しましょう!

フランスの粉って、なーんか荒いんですよね。粉の風味が強い気がします。

ただ、この小麦粉はアーモンドなどのナッツ類、チョコレートとも相性がとても良いです。逆にいうと、粉だけでの組み立てだとちょっと強すぎるな。個人的にはそんな気がします。

ちなみにサブレブルトンと、ノルマンディの違いですが、アーモンドを配合しているか否かの点です(当社比) 加えて小麦粉の配合量は減るので、より脆い食感を感じられるはずです。

ちなみにグルテン形成の点ですが、油分が多く配合されているせいか、粒子の細かい小麦粉同様、レスポンスはいいとは感じられませんね。この小麦粉自体、特定の焼き菓子専用に使うものなのでいろんなもので比較検証しているわけではないので悪しからず。

粉の話も相当尽きないので、そろそろ次の議題です…

それは!澱粉!

コーンスターチに代表されるデンプンについて

一般的に言えばお菓子の世界ではコーンスターチが一般的ですね、やっぱりカスタードクリームでも殆どが薄力粉とコーンスターチ半量ずつで炊きますし。

小麦粉はグルテン形成してプリっと。そんなイメージですね。一方のコーンスターチはお料理で多用する水溶き片栗粉…いわゆるトロミを付ける役割です。小麦粉だけのカスタードクリームだと少々ゴムゴムしい食感になってしまうので、程よくキレの良い食感にするためのでんぷん質なのです。

主に焼き菓子では意図的にでんぷん質を利用します。ガトーショコラガーデナーでは、薄力粉と「こめ粉」でんぷんを半量ずつブレンド。溶かしたチョコレートもたっぷり加えた配合の生地なので、チョコレートの風味がしっかり留まってほしい。歯切れの小麦粉だけではなくて(グルテン形成された組織がほどけていくような雰囲気) くちの中に程よく留まる澱粉質を組み合わせることで印象を操作できると思っています。あと、こめ粉でんぷんは少ししっとりとする感じですね。

 

 

ディアマンカフェ、コーヒー豆を微粉末に挽いたものを加えて焼き上げたクッキー。

いわゆる「つなぎ」と呼ばれる水分は、卵黄のみを加えてホロりと崩れるように。油分主体の卵黄ならグルテン形成を抑えて、脆い食感に仕上げられます。アーモンドパウダーを多く配合させているので、サブレノルマンディと同じフランス産小麦、そしてここでもでんぷんをブレンドしています。

じゃがいもでんぷんは、少しねっとり感じます。

粘性で言うと、とうもろこし、こめ、じゃがいも。の順にしっとり感が深まっていく感じです。

 

 

チョコレートのフィナンシェも、小麦粉ではなく、でんぷんで生地をホールドしています。

焼きチョコっぽい食感にしたいので、ねっとり感をつける事でチョコレートのフレーバーが活かされていると思っています。

(他のフィナンシェについては薄力粉で焼き上げています)

 

ガトーショコラガーデナーもちょっと特殊というか、溶かしたチョコレートを空気をたくさん含ませたバター生地で、メレンゲを加えてふんわりとさせた食感に焼き上げているのですが、チョコレートの印象をより咀嚼の中に残したいので、薄力粉とこめ粉でんぷんを同割でブレンドしています。

こめ粉と澱粉を組み合わせて焼き上げているのが、ベイクドドーナッツシリーズ。詳細は下記リンクからご確認ください。

https://www.perruche.jp/6768.html

 

 

 

今回もすごく長々と書き出してしまいましたが、近々発表するクッキー缶についての布石にもなっています(乞うご期待)日々菓子と向き合い、より良くしていこうと試行錯誤しておりますことを併せて報告します。

 

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