蔵元の日本酒そのままに、風味豊かなカステラが焼きあがりました!

「お酒を使ったケーキってありませんか?」

このお問い合わせって、実はどこのお菓子屋さん、パティスリーでも同じように受ける質問だと思います。
ダンディーケーキ、またはブランデーケーキと呼ばれる、ラム酒やブランデーをこれでもか!っていうくらい、たっぷり染み込ませた、カットされたパウンドケーキに出会ったりします。同様に酒ケーキ、と呼ばれるものにも。

これらのお菓子に共通してるのが、アルミ箔みたいな袋にシロップが染み出ないように綴じられていること。それくらいたっぷりなんでしょうね。あと、好き嫌いはっきり分かれますけど、ババ。これもシロップに浸して、滲み出るほどのアルコールシロップが特徴ですよね。

あれはあれで美味しいと思うのですが、もっとこう、アルコールではなくて、お酒の旨味みたいなものがもっときちんと感じられるような何かが作れないか?と、ずっと模索していました。

そんな折、とある幼稚園の卒業のお祝いに、園児たちに食べさせるケーキの相談を受けました。
複数の園児が卵アレルギーがある。とのことだったのですが、乳製品もダメで。ということだったのです。
マフィンケーキにホイップクリーム。という組み合わせだったのですが、見た目もある程度揃えて欲しい、というご依頼に頭を悩ませたどり着いたのが、ライスクリーム

作り方は簡単で、炊いたご飯(冷やご飯でも可)に、熱いお湯を注ぎ入れて、フードプロセッサーやカッターミキサーでしっかりと攪拌するだけ。
ポイントは、お米のアルファ化。糊化とも言います。90度くらいの温度帯でしっかりとミキシングを続けることで、ツヤと粘りのある状態に仕上げると、甘さも引き立ち、保形性にもつながるのです。
どうにかして、このライスクリームを用いて、卒園式用のアレルギー対応のクリームを作ることができたのです。

日本酒はいつも地元鯖江の加藤吉平商店様に買いに赴くのですが、蔵元ということもあって、板粕をよく目にしていたのです。
加藤吉平商店のホームページへはこちらから

ライスクリームの要領で板粕を使えば、甘酒風のお菓子を作れるのでは?
ひとつのひらめきに、点と点が繋がった瞬間でもあったのです。
前置きが長くなりましたが、酒からカステラが誕生したきっかけです。製法とともにご紹介します!

スポンサーリンク

スチームオーブンを利用して焼き上げるカステラ生地

カステラでは珍しい、卵白のみを使用してメレンゲを泡立てて仕込む製法です。
甘さにコクのある上白糖、アカシアのはちみつを、あらかじめ卵白と一緒に計量して、室温でなじませておきます。
糖分が多いので、卵白と一緒に置いておくことで糖分と卵白の水分が馴染みます。このあと、火にかけて42〜3度に温めてからミキサーにかけて泡立てていくのですが、この作業を怠ると糖分が十分に馴染まずに、シュガーブルームを引き起こしたりするリスクがあります。

泡立ったメレンゲに、液体植物性油脂を加えて軽く混ぜ合わせます。冷えてもバターのように固くならないのでしっとりとした生地作りに欠かせない存在です。卵黄の持つ油分程度の量を追油しているイメージの配合量です。

板粕と牛乳を一緒にレンジで温め、熱々の状態にします。この時、深手の耐熱容器に入れて、ラップ材で覆うことも、重要な作業なのです。

ライスクリームと同じ要領で、スティックミキサーを使って2分程度かけてしっかりと攪拌します。ツヤと少しの粘り気も見て取れます。

ミキサーから下ろした生地に、篩った薄力粉を加えて混ぜ合わせます。
カステラでは特にさっくりではなく、しっかりと粉気が無くなってからも生地を混ぜて、グルテンを出していくのです。

ツヤと少し粘り気がある状態。
生地が膨らみ、ボリュームが出たあと、オーブンから出したらぺちゃんこ。。。グルテン形成がきちんとできていないと起こりうるリスクだと覚えておいてください。シフォンケーキでも同様ですよ!
*バターカステラの投稿でもグルテン形成について触れています。詳細はこちらから

板粕のクリーム、粉と合わせた生地を同量程度づつ取り分けて馴染ませ、全体を合わせ完成させます。

木製の木枠に生地を流し入れて平に均し、150度のスチームオーブンで焼成します。
蒸気の熱と、木枠のゆっくりとした熱伝導を利用して、ふんわりと生地を持ち上げて生地を焼き上げていくのです。

表面はこんがりとした焼き色ですが、内層はメレンゲで構成された白い断面が姿を現します。木枠に生地を流し込んだ生地は、蒸篭で蒸したようにきめ細やかな舌触りに焼きあがります。

濁り酒とも呼ばれる無濾過生原酒です。風味の強いものを使い、味わいと香りを活かしてシロップと混ぜて、焼き上げたカステラの表面にアンビベ(塗布)します。

仕上げにすっぴんの日本酒の味わいをゆっくりとカステラに染み込ませていくことで、酒粕独特の風味を後押ししてくれるのです。

切り分けたカステラには、コテで焼き目をつけます。蒸し菓子、饅頭など、和菓子でしばしば目にするそれにちなんでのことです。

お酒の風味の感じ方も人それぞれだと思いますが、純粋に日本古来から伝わる、麹と発酵に由来する素材、日本で独自に発展した和菓子、カステラを組み合わせて開発した自信作。室温よりも、冷蔵庫で冷やしてお召し上がりいただくと良いかと思います。

スポンサーリンク

ご質問・お問い合わせはこちら
aaa

こちらの記事も読まれています