りんごのシブーストの古典菓子から現代的構成とレシピに製法まで!一挙公開です!
ムースクリームでもバヴァロワでも、プリンでもロールケーキでもない。シブスートっていうお菓子は一体なぁに?
クレーム・シブーストは、カスタードクリームにゼラチンとイタリアンメレンゲを混ぜて作ったクリームのことです。
遡ること1800年代。当時は未だ冷凍保存の技術が乏しく、生クリームもなかった時代。今日でいうところの、ムースクリームの先駆けとも言える、古典菓子としても有名です。
この菓子は1800年代後半のパリ・サン・トノレ通りに店を構えていた菓子職人シブースト氏が作り出した菓子で、その名も「シブースト」と命名されたのが始まりと言われています。
ペルシュで提供するのは、1800年台当時を意識した、生クリームやバターは加えない、卵黄と牛乳で炊き上げたカスタードクリームと、熱く熱したシロップを卵白に注ぎ入れて泡立てるイタリアンメレンゲで仕上げた、軽い口当たりのクレームシブーストを作っていきます。
そして焼き鏝(コテ)を用いて、グラニュー糖を焦がしていく「キャラメリーゼ」の作業を合計4回繰り返します。これにより分厚いキャラメルの層が形成され、ふわっ、パリっ。とした食感のコントラストが生まれます。
さらにお菓子に濃厚さをプラスするためのタルトには高脂肪クリームで仕込んだ濃厚プリン、アパレイユペイザンヌをりんごのプレザーブを詰めたパイ生地に流して焼き上げたものを土台に据えます。
菓子職人が手間暇をかけて仕上げた、基本となる技法を余すことなく盛り込んだシブーストをお楽しみください。
なお、りんごのシブーストの製法とレシピ、動画を紹介しているペルシュのサイトへはこちらから
*投稿の最後にシブーストのバリエーションを一覧で紹介しています。合わせてご覧ください。
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カスタードクリームとイタリアンメレンゲで仕上げるフランスの伝統菓子、シブーストクリーム
シブーストの仕込みは、カスタードクリームの炊き上げ、イタリアンメレンゲの泡立て、そしてふたつの素材を混ぜ合わせてクリームを仕上げる。工程はシンプルに聞こえますが、作業を同時に進めていかなければいけないので難易度が高めです。その理由も含め、工程順に解説を進めていきましょう。
最初に卵黄にグラニュー糖を加えて擦り合わせたら、篩った小麦粉を加えて静かに混ぜ合わせます。
小麦粉は混ざれば十分です。練りすぎは不要なグルテン形成を招いてしまいます。
バニラビーンズで香りをつけた熱々の牛乳を少しづつ注ぎ入れて馴染ませ、鍋に戻してカスタードクリームを炊いていきます。
クリームがふつふつと煮たってきて、なめらかな状態になるまで火にかけ続けます。
炊き上がったら鍋から手早くカスタードクリームを空け、目の細かい裏ごしで通します。
炊き上がった熱々のカスタードクリームに、りんごのブランデー、カルヴァドスを加えて混ぜ合わせます。クリームの余熱を利用してアルコール分を飛ばします。
イタリアンメレンゲの泡立て
甘みは控えめに抑えたイタリアンメレンゲを作るのですが、シブーストクリームを作る時にはしっかりと泡立ったメレンゲが不可欠。ここではグラニュー糖の半分の甘味のトレハロース (糖分は半分でも、砂糖としての機能性は同じ)を用いて、卵白の泡立て用に加えてしっかりとしたメレンゲを泡立てます。
カスタードクリームと溶かしておいたゼラチンを合わせます。ここではイタリアンメレンゲの泡立ち具合に合わせてこの作業を行います。仮に早く入れてしまい、メレンゲの泡立ちを待っている間にゲル化してしまってはいけないからです。ベースがカスタードクリームなので、再加熱でクリームにダメージが加わる。混ぜすぎで粘りが出てしまう。いろんなリスクが伴うのです。
メレンゲとカスタードクリームを混ぜ合わせます。カスタードクリームはゼラチンを加えることで少し流動性のある状態になっています。
メレンゲとカスタードクリームの比重が大きく異なるので、メレンゲが浮いてしまうことで混ぜすぎにならないよう、、最初にホイッパーである程度生地を馴染ませていきます。
最後はゴムヘラでボウルの底と側面を丁寧に合わせて仕上げます。ふんわりとクリーミーに仕上がります。
アパレイユペイザンヌの仕込み
高脂肪生クリームと全卵、グラニュー糖を合わせ、プリン生地のように仕込むややリッチなテイストの「アパレイユペイザンヌ」
アパレイユは主にプリン生地のような液体のものを総称したものとして使われます。
ここでもりんごのブランデー、カルヴァドスを混ぜ合わせ、りんごの風味をアパレイユに付けます。
裏ごしてアクを取り除いたら、空焼きしたパイ生地にりんごのプレザーブを並べてアパレイユを流し込み、200度ののオーブンで、生地が染み出さないように手早く火を通し、表面をこんがりと焼き上げます。
シブーストのキャラメリーゼ
分厚く敷かれたキャラメルの層は、シブーストの美味しさの醍醐味のひとつ。
冷やし固めたシブーストクリームをタルトにセットして、グラニュー糖をまぶしてから、焼きコテを用いてキャラメリーゼしていきます。
1.5mmほどでしょうか。グラニュー糖をシブーストクリームの表面に広げて、熱したコテで一気に溶かし、キャラメル状にします。
ガスバーナーで表面を炙るように溶かすやり方では、シブーストクリームが熱に耐えきれなく、キャラメルと一緒に溶け出してしまいます。
キャラメリーゼができたら、再度グラニュー糖を広げてキャラメリーゼ。
この作業を4回繰り返して、徐々に分厚いキャラメルの層を作り上げていくのです。
キャラメルの色付けに粉糖で最後のキャラメリゼを行い(グラニュー糖でのキャラメリゼの仕上がり具合で省略することもある)完成です。
パリパリのキャラメルと、ふんわりとしたシブーストクリーム、りんごが詰まったタルトペイザンヌ。これはエッグタルトというのがもしかすると一番ニュアンス的には近いかもしれませんね。ただし、当時のシブーストでは生クリームは無かったので完全無欠なクラシックというわけではないにせよ、近年見直されている古典菓子の良さを感じるには目新しくもあるのかもしれませんね。
シブーストのバリエーション
二種類のチョコレートを用いて仕上げる、シブーストショコラの詳細はこちらから
シブーストバナナはバナナピューレで炊き上げるカスタードクリームを主体にしています。こちらから
レモンのシブーストはいちごのソテーとの組み合わせで。こちらから
福井県鯖江市でケーキ屋を営むシェフが、お菓子についての疑問を幅広く解説することを代弁する小鳥。
現場で培った経験はもちろん、ケーキ作りで欠かせないレシピ作りの構成、素材に対しての向き合い方。
時々自身のブログではお菓子作りを通じての活動や日々感じたことも紹介しています。