いちごとショコラのテロワールを結ぶ、ポートワインのマリアージュ
ポルトガルワイン。ポートワインの呼称で親しまれています。デザートワインとしての位置付けであり、お菓子づくりでは甘さがしっかりとしているので割と使いやすいアルコールとしても使用されています。
先日何気なく味わったエクアドルカカオのショコラが持ち合わせたテイストノートが、いちごのジャムとしっくりまとまるであろう、想像を掻き立て続けられて制作に挑んだ今回の新作。
なお、この味わいについて書き留めたペルシュブログの記事へはこちらからご覧いただけます。
オーガニックチョコレートブランドとしても広く認知されている、KAOKA社のサントメ諸島のカカオチョコレートが持ち合わせるフレーバーを巧みに組み合わせ、イメージする味わいを具現化したマリアージュ、詳細を紹介します!
そうそう、オトナなタルトショコラ、と名打ったのですが、アルコールを感じる味わいですので、このような名称にしました。サヴァランなどの雰囲気に似た感じだと思います。
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ワインのテイストノートが発想の基に出来上がったタルトショコラ
ガナッシュショコラの仕込み
ショコラの味わいをダイレクトに感じてもらうため、低脂肪のフレッシュクリームを合わせて仕上げるガナッシュに仕上げます。
ハイカカオであることをここではうまく活用して、通常加えることがほとんどのバターを加えずに仕上げます。
あらかじめから焼きしておいた、パートサブレショコラに出来上がったガナッシュを流し入れます。
乳化作業を行うことで、ツヤのある綺麗なガナッシュに仕上がります。
一旦冷蔵に入れてきちんと結晶化させます。
ポートワインといちごのフルーツクリーム
甘みと香りの強い、マラデボワ種フレーズピューレ、アクセントに少量のブラックベリーピューレをブレンドします。
デザートワインとして有名な、ルビーポートワイン。その甘さの際立つフレーバーは、その製法に秘密が隠されているようです。
赤と白があり、赤は輝くルビー色で「ポルトガルの宝石」と称されている。一般に、白は「食前酒(アペリティフ)」としておつまみなどと一緒に、赤は「食後酒」としてチョコレートや葉巻などと一緒に飲まれている。
より詳細はこちらからどうぞ
食後のデザートのニュアンンスを表現したいため、あえてポートワインのアルコール分が残るように仕込みます。
ポートワインの香りの印象がはっきりとこのふたつに置き換えられそうです。
ひとつはバニラの鞘、もうひとつはブラックペッパー。ブラックペッパーはスタンダードなインドネシア産のキュベブ種、バニラはブルボン種を使用します。
フレーバーとしては、甘みが際立つ印象が強いですが、いちごジャムのような深い甘みのニュアンスを感じ取ることができます。
バニラとペッパーの香りをアンフュゼ(抽出した)シロップを、ポートワイン、二種類のピューレ、ゲル化剤と一緒に、とろみが出るまでロボクープにかけて、ポートワインのフルーツソースを完成させます。
結晶化したガナッシュの上に、ポートワインのクリームを流し入れます。
ソース状なので、一旦冷凍して冷やし固めます。
シャンティショコラを仕込んで絞り出す
ここでも使用するチョコレートは、サントメカカオのブラックチョコレート。
温めた牛乳を注ぎ入れて、ガナッシュのように仕上げていき、冷たいフレッシュクリームを注ぎ入れて氷水で冷やした後、一晩かけてクリームを休ませてからホイップして使用します。
一晩休ませたもの(右)と、泡立てた状態(左)。クリーム全てを泡立てて空気を含ませることで、軽い食感のクリームに仕上がります。
表面が凍ったポートワインのクリームの上に、シャンティショコラを渦巻き状になるように絞り出します。空気を含ませたチョコレートクリームを配置することで、空気の軽やかさが幾分アルコール分の印象を穏やかにしてくれる効果もあるのです。
いちごのジャムを仕込む
甘みに重さを持たせるため、マダガスカル産ミュスコバドシュガーを加えてジャムを炊き上げていきます。
グラニュー糖、バニラの甘い香りがプラスされたきび砂糖のミュスコバドシュガーをいちごに絡めて2時間ほど置き、水分と糖分の移行を促します。
強火にかけながら一煮立ちさせて、一晩休ませます。
翌日、裏ごした果汁とペクチンを合わせて再度火にかけて煮詰め
糖度52度程度に煮詰めたところで、果肉を戻して再度一煮立ちさせれば完成です。
ジャムの熱が取れたところでスティックミキサーにかけてソース状に仕上げて使用します。
シャンティショコラのくぼみ部分に流し入れて、再度シャンティショコラでソースが漏れないようにフタをします。
断面、タルトショコラを切り取ると、液状のソースが流れ出す仕組み。
シンプルで無骨に見えるいちごのタルトショコラは無駄な飾り気は極力省き、素材同士の組み合わせが織り成すテロワールを唯一のビジュアライズで表現してみました。しっかりとした甘みのニュアンス、ブラックチョコレートのビターである概念を根本から覆す味わいを感じていただきたいです。
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