冷たいオペラは夏向けのチョコレートデセールの新定番
暑い季節ともなると、日々の食事にも「冷製」なるメニューが登場します。
冷製パスタ。前菜のメニューでも冷製と呼ばれる、パテやテリーヌなどが有名ですね。
これらの場合、スパイス、ハーブなどで香りを補強したり、そういった意味では、冷製と呼ばれるお料理では「冷たさ」よりも、「冷たい状態でも」感じる味わいに特化しているように感じます。
スイーツで冷製と言うと、ソルベ、ジェラート。などが代表的だと思います。
ただ最初に述べたように、今回意識したのは「冷たさ」よりも、「冷たい状態でも」がテーマです。
お料理で例に挙げるとすれば、クラシックなパテのイメージ。パテドカンパーニュがまさにそれです。
夏の暑い季節にこのどっしりしたパテを真正面から向き合うのはちょっと。食べたい気持ちはやまやまだけど、脂肪分が多くて少々しんどい。そういう意見ももしかするとあるかもしれませんね。
そして同様なことがお菓子の世界においても言えるかもしれません。
バターリッチなクレームオゥブール(バタークリーム)、油脂分がリッチなアーモンドスポンジのビスキュイジョコンド、グランマルニエに代表されるアルコール度数の高いお酒を混ぜたシロップをアンビベしたり。カカオリッチなチョコレートもガナッシュに仕上げるとどっしりとした味わいに。
今回スポットを当てたのは「オペラ」。伝統的な古典菓子の代表です。夏場にオペラがショーケースから姿を見せなくなるのはどうしてか?どっしりとしたリッチな味わいを食べ切るには重たすぎる。しかしながら重たすぎる油脂分を少しコントロールしてあげることで、オペラを味わった満足度を十分に得ることが出来るであろうというコンセプトです。
冷製オペラ
ネーミングよりもずっと深く構築した味わいは「感じ取ってほしいつくり手の想い」がたくさん詰まっています。モダンなスタイリングとしてジャースイーツを取り入れましたが、味わいは正統派オペラを余すことなく表現しました。
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ジャースイーツで味わうオペラ
アングレーズベースを炊き上げます。
ここでは卵黄を少なく配合したタイプのものを採用します。卵黄にはレシチンと呼ばれる乳化を促進してくれる物質が含まれています。マヨネーズが乳化する原理として、レシチンのチカラが作用すると言われています。しかし、油分も多いので、重くなりがちです。凝固作用を助けてくれる補助剤としてペクチンを使用します。ゼラチンのようなゼリー状に固まらず、むっちりとしたセット力が、アングレーズの印象により近付けてくれます。
画像では、炊き上がったアングレーズベースにラム酒を加えているところ。アルコール分は熱いうちに加えてフランベ状にして飛ばしてしまうのです。見比べることでより明確になると思いますが、炊き上げたアングレーズは色合いも少々薄め。卵黄が少ないためです。
ブラジル産カカオビーンのチョコレートにアングレーズを注ぎ入れてチョコレートクリームに仕上げます。
伝統的なオペラはチョコレートガナッシュを用います。しかし、ここでは牛乳を多く配合して、卵黄を減らしたアングレーズを採用して、生クリーム、バターが配合されるガナッシュよりも軽い口どけを目指しました。
あらかじめ焼成しておいたチョコレートのパウンドをリッド付きのグラスの底に置いて、なめらかショコラを流し入れていきます。
ドーム型のパウンドをコーテイングするようなカタチになめらかショコラを流し、結晶化させます。
ホワイトチョコレートとガテマラのチョコレートクリーム
ガテマラコーヒービーンは荒く砕いて、温めた生クリームに漬け込み、一晩かけて香りを抽出します。
翌日、ビーンを丁寧に裏ごし、泡立てたものを
ホワイトチョコレートと牛乳で合わせたガナッシュとふんわり合わせて、モカ風味のクリームに仕上げます。
くぼみの頂点にテンパリングして型抜きしたブラックチョコレートのディスクを置いて、空洞を作った状態のところにクリームを絞り出します。
ドリッパーで仕上げるコーヒーゼリー
柑橘にも似た華やかなコーヒー豆を選びます。オペラではグランマルニエをアンビバージュするのが一般的。オレンジコニャックの印象を損なわないよう、ドリップにも細心の注意を払います。
海藻由来、アガーとグラニュー糖をミックスしておいたベースに、ドリップしたコーヒーを注ぎ入れます。
よくかき混ぜて溶かし、バットに流し入れて冷やし固めます。ここで加える糖分は少量。苦味も感じる味わいはエスプレッソゼリー。というのがむしろ正解です。
濃いめに抽出したコーヒーにはオレンジコニャックとシロップを合わせて
モカクリームを絞り出して再度チョコレートディスクをセットしたベースの上に、コーヒーシロップに軽く浸したアーモンドのソフトなパウンドをセットします。このパウンドはオペラのビスキュイジョコンドを表しています。
仕上げにはエスプレッソジュレを。艶やかなジュレは、オペラの表面を濃厚に彩るグラサージュそのものです。
夏は食欲減退と言われます。それは食事を摂ることにより、体温が上昇することと関係があるようです。カロリーが高い=熱量が上がる。。カラダのメカニズム、自己防衛としての働きではあるものの、好みの美味しいものを季節に応じて食べ分ける。夏に食べ易く仕上げることで、オペラの味わいをシーズンレスで楽しめるという実験的要素も含んでいるのです。意図的に構築したグラス内の空洞が、チョコレートディスクの食感を強調したり、味わいの変化を楽しむための休符でもあるのです。
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